五郎:病院にもハッキリ言えば「経営」があるからな。
ソムチャイ:でも、儲けの前に患者がいます。
五郎:確かに!
だけど「経営」はイコール「儲けるため」と考えない方が良いな。
「患者」はお客様だ。
「お客様に良い経営」でなければ、結局は「儲からない経営」になる。
患者がいて成り立つのが「病院」、死ぬ人がいて成り立つのが「お寺」・・・アハハ。
ソムチャイ:五郎さん!!
五郎さんのジョークは面白くないです。
五郎:まあ、そうトンガルな。
私はリアリティーを言ってるだけさ。みんなも心では同感なはずだ。
ソムチャイ:でも、口に出すのと出さないとでは違います。日本の人は言い過ぎが多いです。
五郎:分かった、分かった。
以前ね、こんなことがあったんだよ、ソムチャイさん。
私がバンコクに赴任してすぐの頃のことだけど、
同僚と二人で本社の「おえらいさん」を出迎えに行ったんだ。
もう飛行機が着くかな、という時分に突然同僚が倒れちゃった。
「おえらいさん」は到着する、同僚は倒れちゃった・・・、どうする!?どうする!?・・・だよ。
同僚より「おえらいさん」の方が大事だからね、同僚はとりあえず車の中に寝ててもらうことにして
「おえらいさん」を待った。幸い、早めに出口に見えたんで、事情を話して先ずは病院に寄ってから
ホテルにチェックインすることで了解してもらったんだ。
ソムチャイ:そんな!上司はタクシーかなんかでホテルへ行けば良いのに!
五郎:ああ、私は良いよ・・・、出世の希望もないし。
だけど肝心な時に黙って顔も出さないんじゃ同僚には『キズ』がつく。
ソムチャイ:私にはそういうことは分かりません。昔の「身分制度」か「徒弟関係」みたい。
五郎:まあ、まぁ。
同僚の彼はね、顔は真っ青、体中に冷や汗ビッショリ、嘔吐はすごい・・・。口がきけないんだ。
彼は長くタイに在住してたから、家族とバンコクの郊外に住んでいた。
彼から、やっと病院のあり場所を聞いて、駆け込んだんだ。彼の家族が日頃使っている病院だ。
ソムチャイ:・・・・。
五郎:救急入口で彼はまた嘔吐してゼイゼイ言っていた。
ともかく救急治療室に入って、熱と脈拍、血圧を測った。
医師が駆けつけてくるのかな・・・と思ったら、白い服を着た事務員が来て私に頻りに話しかけるけど
その頃私はタイ語がさっぱりで、何言ってるか分からない。
事務員は彼のところに行って、やわら説明書を広げて手続きの説明を始めた。覗いたら、料金表だ。
治療のコースと費用、病室のコースと料金が書いてある『メニュー』表で、まあ言ってみれば入院・
治療の「松・竹・梅」だね。
ソムチャイ:五郎さん、もう少し良い例がないんですか!?
五郎:「1泊食事付きで一人部屋なら**バーツ」「その下のクラスで4人部屋なら**バーツ」と
事務員が説明している。彼は「そのコースは高い、他にないか?」みたいなこと言ってる。
苦しくて口もきけない状態なんだよ、医者は顔も出さない。
急に腹が立ってね、私が言ったんだ「一人部屋の一番高いヤツ」って。
ソムチャイ:タイ語も分からないのに?
五郎:相手の事務員は完全に理解したね。急に笑顔になって「こちらへ・・・どうぞ」って
丁寧に案内された。何と、会計窓口だ。
そこで頭金5000バーツ払って、契約書に支払保証人のサインをして、
パスポートの番号書かされた。
ソムチャイ:・・・・。
五郎:会計が済んで、「支払証明書」持って救急室に行ったら、医師が登場してね、すぐに
点滴が始まった。ドクターも診察を始めたというわけだ。