タイランド情報

バンコク騒動2013.12.02

以下の記事はNewsClipから転載
上の2枚の写真はNewsClip提供、3枚目はTheNation提供

【タイ】11月30日夜から12月1日にかけ、バンコクで反タクシン元首相派のデモ隊と警官隊、タクシン派市民との衝突があり、少なくとも4人が死亡、50人以上がけがをした。


 タクシン派が集会を行っていたラチャマンカラ国立競技場周辺で、反タクシン派の学生、職業訓練校生とタクシン派市民が銃を撃ち合うなどし、4人が死亡した。周辺地区はタクシン派市民が乗ったバス、タクシーを反タクシン派市民が襲撃するなど混乱状態になり、バスが放火され、炎上するなどした。タクシン派は1日朝、集会を中止し、撤収した。


 一方、反タクシン派のデモ隊はバンコク都内のタイ首相府、タイ警察本部、バンコク首都警察本部、地上波テレビ局などへの突入を図った。首相府、警察への侵入は催涙ガス弾などで阻止されたが、テレビ局への侵入は成功し、国営テレビ局の放送が一時中断するなどした。タイのジャーナリスト団体は反タクシン派の行動を非難する声明を出した。


 反タクシン派のデモ隊を率いる野党民主党のステープ元副首相(元民主党幹事長)は1日夜、演説を行い、軍司令官の立ち会いのもと、インラク首相と会談し、「人民議会」に権力を委譲するよう伝えたと述べた。また、公務員、国営企業社員などに対し、2日からゼネストに入るよう呼びかけた。


 反タクシン派のデモ隊は国旗を振り、ホイッスルを吹き鳴らし、デモ会場周辺は騒音に包まれた。ただ、バンコクの大部分は平穏で、通常通り、食事や買い物を楽しむ姿が見られた。



【タイ】反タクシン元首相派による反政府デモは、指導者のステープ元副首相が様々な職種の代表からなる「人民議会」に国権を委ねるという構想を打ち出して、政府との対話を拒否し、こう着状態が続いている。


 インラク首相は28日、テレビ演説を行い、プミポン国王の誕生日(12月5日)が迫っていると指摘し、反タクシン派に対し、デモを中止し、対話に応じるよう呼びかけた。「人民議会」構想については、憲法上認められないと一蹴した。


 ステープ元副首相はこれに対し、対話を拒否するとともに、インラク首相の辞任や下院解散では問題が解決しないと主張。デモで政府機能を麻ひさせた後、「人民議会」を設立し、タクシン元首相の影響力の完全排除を図るという戦略を改めて示した。


 野党民主党は同日、緊急会議を開き、反政府デモへの対応を協議した。前政権で自分が首相、党首、ステープ元副首相が治安担当の副首相、党幹事長という立場であったアピシット党首はステープ元副首相に同調して、党の下院議員を反政府集会に参加させる方針を決めた。民主党はステープ元副首相が繰り広げる「非民主的」で「非合法」の恐れがある活動に片足を突っ込んだ形だ。一方、アピシット政権で財務相を務めたコーン前民主党副党首はデモ隊による省庁占拠やステープ元副首相の構想を批判し、ステープ元副首相らとたもとを分かった。


 反政府デモ隊は28日、バンコク都内の民主記念塔での反政府集会と、財務省・予算庁の占拠、バンコク郊外の政府総合庁舎の一部占拠を継続するとともに、都内ラマ1世通りの警察本部、サナームチャイ通りの国防省などにデモ行進した。警察本部前には約3000人が詰めかけ、建物への電力供給を遮断するなどした。


 反タクシン派、タクシン派の抗争は、経済格差、地域格差、教育問題、さらにはタクシン派の支持基盤である東北人への民族差別的な要素も含み、感情的なレベルの対立が深まっている。問題を整理分析して対応する理性的なアプローチはほとんど見られず、解決を難しくしている。
 

 特権階級とバンコクの中間層、南部が中心の反タクシン派にとって、インラク政権は反王室の汚職政治家であるタクシン元首相が「教育水準の低い東北人」を選挙で買収して発足した政権で、国を正しい方向に向かわせるためには、タクシン元首相と妹のインラク首相らの追放が必要となる。だが、選挙でタクシン派に勝てないため、軍事クーデターや憲法裁判所の判決といった非常手段に頼る傾向が強く、タクシン派に比べ「教養」があると自負する反タクシン派が民主主義の原則を否定し、前時代的な主張を繰り返すという矛盾に陥っている。


 一方、タイ東北部、北部の中低所得者が中心のタクシン派にとって、タクシン元首相は、これまで顧みられなかった地方、低所得者層に低額医療を行き渡らせ、農村・地方開発を進めた「民主主義のリーダー」。インラク政権は選挙で選ばれた正統な政権で、反タクシン派は軍事クーデターや裁判でタクシン派政権の転覆を繰り返す非民主的な勢力ということになる。ただ、タクシン元首相の存在、特にその反王室のイメージが、反タクシン派の生理的反発を招き、国の成長を阻害しているという面は否定しがたい。


 今回のデモは、選挙で選ばれた政権の転覆を図るだけでなく、国の制度そのものを変えようとする意図がみられる。通常であれば、デモ隊が財務省などの占拠に踏み切った時点で、警察が強制排除すべきであったろうが、タイでは軍・警察による暴徒のコントロールがうまくいった例がほとんどない。アピシット政権時の2010年には、バンコク都心を長期占拠したタクシン派デモ隊と治安部隊が衝突し、91人が死亡、約2000人が負傷するという惨事が起きた。また、軍の忠誠心がどちらに向いているかわからない現在の状況では、警察とデモ隊の衝突で多数の死傷者が出た場合、軍が治安維持を理由にクーデターに踏み切る可能性も排除できない。こうした経緯から、政府は強制排除に及び腰で、それを見越したデモ隊が省庁占拠を拡大し、政府機能が徐々に奪われていくという、傍から見れば不思議な事態が起きている。

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