ソムチャイ:ところで、入院した同僚の彼はどうなったんですか?
五郎:だいぶ前の話だから、細かなことは忘れたけど、ともかく上司をホテルに送り届けて
病院へ様子を見に戻ったと思ってくれ。
ソムチャイ:病室には入っていたんですか?
五郎:それは、もちろん。上司を送る前に病室を決めたからね。
だけど、病室に戻ってみたら驚いたね。
ソムチャイ:・・・?
五郎:彼の家族がみんな来ている。
ソムチャイ:それは日本も同じでしょう?
五郎:う〜ん。 ちょっと、違うかな。
ソムチャイ:・・・?
五郎:彼はタイの女性と結婚していて、子供もいる。
その子供たちに、ばあちゃん、妹、嫁さん・・・みんな病室にいて、
もう、10時は過ぎていたと思うけど、彼の病状もスッカリ回復しててネ、子供たちは大喜びで
はしゃいでる。ばあちゃんは床にゴザ敷いて、掛け布かぶって寝ている。嫁さんはさて、どこに寝たか・・・。
ソムチャイ:何かおかしいですか?それ。
五郎:そこだよ、そこ。日本の病院で家族みんなが楽しく一泊して帰るなんて・・・考えられない。
タイのキャパの大きさだね。禁止事項がとても少ない。日本の病院は禁止事項だらけだ。
タイでは公の場所がプライベートの場所と入り組んでいて、境目がぼやけている。
ソムチャイ:そうですかね。
五郎:犬を見てみな。日本の犬は首に「輪」をはめられている。狂犬病の予防注射の鑑札つけてる。
門には「犬」の標識が貼ってある。散歩に行けば「フン」は飼い主が片付けるのが原則だ。
ソムチャイ:・・・。
五郎:タイで首輪はめている犬をまず、見たことないね。タイの友人のお宅に遊びに行ったら、
犬が5・6匹いた。「みんな飼ってるの?」って聞いたら、自分のとこの犬は1匹だけと言うんだ。
あとは、他の家の犬だか野良犬だか分からないのが、うちに来て飯食ってる・・・、って。
ソムチャイ:タイでは不思議でないですね。
五郎:そうなんだよな。最初は何で「不思議じゃない」のか分からなかった。
バンコクの市内を歩くと、犬のフンがアチコチに落ちている。迷惑千万だけど
犬を始末しろ、という声はない。受け入れキャパがでかい!!
つまりだよ、タイではすべてのことに「明確な境界線」が引かれてないし、引こうとしていない。
ソムチャイ:何事もハッキリさせない、と言うのはありますね。