五郎:では、角度を変えてどうだ、貧乏の話は?
ソムチャイ:気が進みません。貧乏の実態ですか?あんまり楽しい話じゃないで
す。
五郎:タイの貧乏は暗くない感じだな。何か明るい貧乏だ。
ソムチャイ:そんなことないですよ。やっぱり、大変です。
五郎:日本と比べて・・・、そうだな最近のGDPとか・・・。
ソムチャイ:GDPですか?え〜と。私の分かる範囲ですけど・・・、
2006年のタイの国民総生産(GDP)は700億ドル(20兆円くらい)です。
日本は540兆円。国家予算は95兆円でしょう。比較にならないです。
五郎:まあ、続けて。
ソムチャイ:タイの国民一人当たりGDPは2600ドルくらいで、日本は世界で確か
9位だったと思うんですけど、一人当たりは37,000ドルです。
タイ人一人当たりのGDPは日本人の1割以下です。
五郎:世界一はどこだっけ?
ソムチャイ:ルクセンブルグだったと思います。一人あたり61,000ドルだったか
と思います。
五郎:アメリカは?
ソムチャイ:39,000ドルだったかな・・・?
タイは「金持ち」と「貧乏人」の格差がひどいと思います。
運転していると、道路でお花を売ったり、フロントガラスの掃除をしたりしてお
金をもらっている子供を見かけますよね。学校にもロクに行っていないんです。
乞食もまだまだ多いです。
五郎:「お乞食さん」は良く見かけるね。
ソムチャイ:お金のない人でも乞食にお金を恵んでやります。それで、チョッピリ優
越感に浸ります。困っている人を助けてやりたい、というタイ人の優しい気持ち
から発してるんですけど、タイの社会にとってそれで良いとは思えません。
政府も乞食のいる限り「福祉政策」は後回しです。外国に対して恥ずかしいと
言うのはありますけどね。
五郎:う〜ん。観光立国だからな。そう言えば、バンコクで初めて「バンクサミット」
が開かれたとき、空港から市内へ続く線路脇の、細長いスラム街を撤去したこ
とあったな。私が駐在員になった頃だった。
ソムチャイ:タイ人はミエッパリのところがありますから。お役人さんの考えそうなこ
とですね。追い出された人は大変だったと思います。
五郎:結局どこへ行ったのかな?
ソムチャイ:他のスラムに流れたり、建築現場に入り込んだり・・・。
五郎:建築現場の状況は見たことあるけど、厳しいね。木枠を組んで青いテント張
って。スペースは畳み2畳分くらいだったかな。そういうテントがずらりと並ぶ。
夫婦や子供づれの「家族」所帯も入ってた。
ソムチャイ:私は建築現場は見たことないです。中には入りにくいですから。
五郎:まあ、日本にだって「スラム」がないとはいえないけどね。
東京の隅田川沿いには青いビニールテントを張ったホームレスの人が軒を連
ねて暮らしてる。友人に聞いた話だけどね、ホームレスの青いテントを挟んで
隅田川の反対側にはズラリと高層マンションが建っている。そこにはサラリー
マン家族が住んでいる。夫婦で働いて、朝から晩までがんばりどうしだ。家族
がゆっっくりするゆとりもない。ある時、夫婦でフット川向こうを見たら、青いテン
トに住んでいる住人が隅田川に糸をたれてのんびりと魚釣りをしていた・・・。
ソムチャイ:五郎さん!!!
五郎:これってね、冗談話じゃないんだ。日本はどこかが狂っている。
ソムチャイ:バンコクの一流といわれる大学の学生でも、夜のバイトしている子が
結構いますよ。親がギリギリの生活で仕送りしてくる学生は大変です。遊ぶ金
はないですよ。学費も遊び代も自分で稼ぐしかないです。カラオケやで日本人
相手に働いている女子学生やらレディーボーイになって、歪んだインテリオヤ
ジの相手をしている学生も知ってます。卒業したらちゃんと働いて、親にいっぱ
い仕送りしたいなんていう学生もいます。
五郎:ソムチャイさんの話はすぐ暗いほうへ行くなア。
ソムチャイ:ネクラなタイ人ですから。