五郎:軍隊は歴史的には王朝や地域の支配層のモノだった。
支配を補強して権益を守る装置だったわけだ。
ソムチャイ:今では国によって違いますよね。
五郎:近代国家では文民統制と言う考えが一般的だね。
ソムチャイ:政府が軍の統帥権を持つと言う考え方ですね。
五郎:軍人が政府機関に加わる事を規制しているところも少なくない。
ソムチャイ:タイでも現役軍人は内閣には入れません。
五郎:タイの場合は憲法で軍の総帥権は国王にあると規定されている。
日本では憲法上交戦権という概念を否定しているから総帥権も憲法上の規定がない。
アメリカは議会が統帥権を持っている。議会が権限委譲して大統領が例外的に
統帥権を持つ場合があるけどね。
最近は宣戦布告などで、微妙な政治問題になるケースも
散見されるね。オバマ大統領の告訴も取りざたされている。
ソムチャイ:タイは近代化が遅れていると言えるんでしょうか?
五郎:一概には言えないけど、日本やアメリカとは違いがあるのは確かだ。
ソムチャイ:タイではよく軍のクーデターが起きます。
五郎:クーデターは戦争行為ではないから、王権に叛いたことにはならないね。
むしろ問題は、国王がクーデターという超法規的な行為を『追認』して
正当化してしまえる装置・システムだろうね。
前回の時も、クーデター→国王の追認→軍政の長期化→行政府の重要人事
変更→政策転換→民政移行という政治日程が実施されている。
世界の国々から非民主国家という批判が沸き起こったのも軍の武力を使って
政治転換をしたからだろうね。
ソムチャイ:でも、国民には何の迷惑もかかっていないし、
日常生活に支障はなかったですよ。クーデターを支持する人も多かったです。
五郎:国家権力や政治支配の問題だから見えにくい、分りにくいだけで
国民の暮らしや将来には直結していると見るべきじゃあないかな。
クーデターは自然発生的に起こるわけじゃない。目的があって、明確な意思を持った
人達がいて起きるものだからね。